STEP 03 /収益改善の最短ルート
製品別・案件別の利益管理
仕組みを作って終わりにしないために。現場に負担をかけない「実行予算」の立て方から、見積精度を劇的に高める差異分析の手法まで、「勝てる管理」の要点を公開します。
1. なぜ「案件別利益管理」が製造業の命運を分けるのか
受注数量の変動や失注がある受注生産型では、全社予算だけでは個別の採算がボヤけます。
「感覚頼みの採算管理」の打破:赤字案件に気づかず受注し続け、現場は忙しいのに手元に利益が残らない事態を防ぎます。
管理会計の真の目的:単なる事後計算(答え合わせ)ではなく、「次の受注をいくらですべきか」の確かな判断基準を作ります。
2. 現場と経理の「数字のズレ」を解消する実務ステップ
「経理の計算は現場の実態と違う」と言われないためには、以下の5ステップで「生きた数字」を運用することが不可欠です。
受注と同時に「いくらで造り、利益をいくら残すか」の目標値を設定します。過去の類似案件の実績データを参照し、現実的な数値を積み上げます。
現場で最も原価が狂う原因は設計変更です。客先・自社どちらの要因であれ、仕様が変わった瞬間に実行予算を更新するルールを徹底します。これを怠ると、完了時に「予期せぬ赤字」が発生し、現場の不信感を招きます。
管理番号に基づき、実際にかかった費用を日報等から集計します。
案件完了後、なぜズレたのかを「価格・数量・時間」の観点で解剖します。
分析結果を営業の見積単価修正や現場の工程改善に即座に反映します。
3. 利益を削る「5つの差異」をどう読み解くか
差異分析では、以下のどこに原因があったのかを特定します。
材料費・外注費差異:単価高騰の影響か、それとも材料の使いすぎか?
工数差異:見積もりの甘さか、それとも現場のトラブルや熟練度不足か?
仕様変更差異:追加対応分を正しく把握し、追加請求(リプライス)に繋げられたか?
賃率差異:残業増などによる「1時間あたりのコスト増」が影響していないか?
配賦差異:工場全体の稼働不足が、1案件あたりの負担を増やしていないか?
4. 現場のプロが納得する「実行予算」の勘所
実行予算を立てる際は、以下の計算精度を高めます。
材料費:主要部材の最新単価を反映し、現実的なロス(歩留まり)を見込む。
労務費:予定作業工数 × 予定賃率 で算出。
製造間接費:予定配賦率 × 予定工数 で算出。
原価管理の本質は、下図のようなPDCAサイクルを回し続けることにあります。精度の高い実行予算(Plan)を立て、実績(Do)を集計し、その差異を分析(Check)して次回の工程や見積に反映(Action)する。このサイクルが機能して初めて、現場の努力が着実な利益として蓄積されるようになります。

まとめ:利益管理は「次の勝負」に勝つための仕組み
案件別利益管理のゴールは、終わった後の答え合わせではありません。
「今回の反省を活かして、次はもっと高い利益率で受注する」という、攻めの経営サイクルを回すことにあります。現場の実態を反映した「生きた数字」を、収益向上の武器に変えていきましょう。
案件別利益管理を「収益向上」に直結させるための関連ガイド
案件ごとの採算が見えるようになったら、次は「いかに利益を最大化するか」「工場全体の予算とどう連動させるか」という一歩進んだ管理フェーズへ進みましょう。
1. 算出した原価を「戦略的な値決め」に活かす
■ 案件ごとの「間接費」をより精緻に計算したい方へ
案件ごとの利益を歪ませないために、工場全体の共通コスト(間接費)をどう割り振るべきか、基準の選び方を詳述しています。
2. 個別管理を「工場全体の予算」へ統合する
■ 工場全体の収支予測(フォーキャスト)を行いたい方へ
個々の案件の「実行予算」を積み上げ、工場全体の月次決算や年度計画とどう整合させるかを解説します。
■ 現場の「作業時間」を正しく把握したい方へ
案件別の利益計算の根拠となる「工数(時間)」を、現場でどう区分して集計すべきかおさらいします。
