総合原価計算は、同じ規格の製品を大量に生産する製造業に適した原価計算方法です。 総合原価計算の種類として、①単純総合原価計算、②等級別総合原価計算、③組別総合原価計算があります。 なお、複数の製造工程を有する場合には、上記①~③の原価計算方法と、工程別総合原価計算を組み合わせることにより、工程別・製品別に原価計算を行うことができます。
単純総合原価計算
単純総合原価計算とは、同じ種類の製品を連続して生産する場合に用いられる原価計算方法です。一定期間内に製品の製造のために投入された製造原価(材料・労務費・製造経費)のうち、製作中の製品(仕掛品)の製造原価を差し引いて、完成した製品の製造原価を計算する方法です。 下の表は、単一の製品について、材料を作業開始の時点で全数量を投入した場合における「単純総合原価計算」のイメージです。 材料費の仕掛高は、投入数量に対する仕掛品の数量の比率で計算します。 労務費と製造経費の仕掛高は、製品の製造作業の進み具合を示す「進捗率」を設定し、完成品数量と仕掛品数量に、それぞれの「進捗率」を掛けた「換算数量」の比率で計算します。

上記の表の場合、仕掛品原価は次の手順で計算されます。 ①材料費:材料費の総額に、製造途中の製品(仕掛中)の数量200個を、全数量1000個で割った割合を掛けて計算 ②労務費及び製造経費:それぞれの総額に、製造途中の製品(仕掛品)の換算数量100個を、完成品数量800個と仕掛品換算数量100を合計した900個で割った割合を掛けて計算
等級別総合原価計算
等級別総合原価計算とは、同じ種類の製品を連続して生産するが、製品を形状、大きさ、品位等によって区別する場合に用いられる原価計算方法です。等級別総合原価計算では、製品の大きさや重量などに基づいて、等級ごとに等価係数を設定し、等級ごとの生産数量に、等価係数を掛けて補正した数量に基づいて、製造原価を製品別に集計します。 下の表は、サイズの異なる同一種類の製品について、材料を全工程を通じて平均的に投入した場合における「等級別総合原価計算」のイメージです。製造原価の合計金額は500万円、仕掛品の進捗率は50%で設定しています。

上記の表の場合、製品別原価計算は次の手順で行われます。 ①製品等級別の完成数量・未完成数量に、等価係数と進捗率を掛けて換算数量を計算し、換算投入数量を計算する ②製造原価の合計金額500万円を、製品等級別の換算投入数量の比率に応じて按分する ③製品等級別の製造原価を、換算完成数量と換算未完成数量の比率で按分し、完成原価と仕掛高を計算する
組別総合原価計算
多種類の製品を同時に平行して連続生産する場合、単純総合原価計算では、製品別の原価計算を行うことができません。その場合「組別総合原価計算」により製品別原価計算を行います。組別総合原価計算では、製造原価を製品別に集計し、そこから製品別の仕掛品原価を差し引いて、製品別の完成品原価を計算します。 なお、組別総合原価計算における製品別の製造原価の集計方法は、次の手順で行われます。 ①直接材料費:製品別の直接材料費の投入金額を集計する ②直接労務費:製品別の作業工数×賃率で計算した金額を集計する ③製造間接費:製造間接費の合計金額を、直接作業工数・機械稼働時間・生産数量などの基準(配賦基準)に基づいて計算した配賦率によって、製品別に按分する 下の表は、異なる種類の製品を、材料を全工程を通じて平均的に投入して製造した場合における「組別総合原価計算」のイメージです。

上記の表の場合、製品別原価計算は次の手順で行われます。 ①製品別の完成数量と、仕掛中の数量を進捗率で換算した数量を合計し、換算数量の合計を計算する ②製品別の製造原価の合計額を、それぞれの換算数量の合計で割り、製品1個当たりの製造原価を計算する ③製品1個当たりの製造原価×完成数量により、完成品原価を計算する ④製品1個当たりの製造原価×仕掛中の換算数量により、仕掛品原価を計算する