個別原価計算は、個別受注生産を行う製造業や、建設業に適した原価計算方法です受注番号や指図番号などの管理番号ごとに使用した材料費や作業時間を記録し、受注案件ごとの原価計算を行います。

個別原価計算の手順

管理番号の設定

顧客から注文書の受領し、注文書に対応した管理番号を設定します。この管理番号は、「指図番号」や「受注番号」などと呼ばれています。これらの管理番号に基づいて、材料の払出指示や作業指示が行われます。

材料費の計算方法

資材管理部門は、材料の払出指示や製造部門の出庫依頼書に基づいて、材料の払出を行います。その際「材料出庫伝票」を作成し、材料の払出の対象となった管理番号や材料の品名・数量・金額を記録します。

外注加工費の計算方法

外注費は、発注を行った管理番号ごとに検収金額を集計します。

直接労務費の計算方法

賃率の設定

直接工の労務費の総額を、直接工の直接作業時間の総数で割り、1時間または1分当りの賃率を設定します。                                                                      賃率を設定する際、毎月の労務費と直接工数の実績で計算する場合、賃率が毎月変動してしまい、同じ作業時間でも月によって労務費が異なってしまいます。                                                    そのため、原価管理を容易にするために、「予定賃率」を設定する場合があります。                                            「予定賃率」は、年間の労務費総額の予定金額と、直接作業時間の予定総数に基づいて計算します。                                  

作業工数の集計

製造部門は、「作業日報」を作成し、日々の管理番号ごとの直接工の直接作業時間を記録します。月単位で管理番号ごとの直接工作業時間を集計します。なお、作業日報には、直接作業時間だけでなく、打ち合わせや改善活動などの間接作業時間も記録します。

管理番号ごとの直接労務費の計算

管理番号ごとの直接工の直接作業時間の合計×賃率により、直接労務費を計算します。                                             賃率は、実際の賃率または予定賃率を使用します。                                                              なお、予定賃率を使用して労務費の計算を行う場合、実際の賃率との差額が発生しますので、完成工数と仕掛工数の比率などにより、直接労務費を完成原価と仕掛高に分ける必要があります。

製造間接費の計算方法

配賦基準・配賦率の設定

間接材料費・間接労務費・間接製造経費を合わせて、「製造間接費」といいます。製造間接費は、直接材料費や直接労務費と異なり、どの製品の製造に使用されたのかを直接的に把握することができません。                                                そのため、作業時間・機械稼働時間・生産数量などを基準として、製品ごとや管理番号ごとに製造間接費を按分する必要があります。この製造間接費を製品ごとや管理番号ごとに按分する基準を「配賦基準」といい、按分する割合を「配賦率」といいます。                                                                                                         直接工の直接作業時間を配賦基準として配賦率を設定する場合、製造間接費の総額を、直接工の直接作業時間の総数で割り、1時間または1分当りの配賦率(レート)を設定します。                                                  なお、原価管理を容易にするために、予定賃率と同様に、予定配賦率を設定する場合があります。

配賦基準となる数量の集計

製造間接費の配賦基準を直接工の直接作業時間とする場合、直接労務費と同様に、製造部門が作成した「作業日報」に記録された日々の管理番号ごとの直接工の直接作業工数を集計します。                              機械装置の稼働時間を配賦基準とする場合、「機械日報」などを作成し、日々の管理番号ごとの稼働時間を記録し、月単位で管理番号ごとの機械稼働時間を集計します。                                    製品の生産数量や製品重量を配賦基準とする場合、管理番号ごとの生産数量や製品重量を記録します。

管理番号ごとの製造間接費の計算

直接工の直接作業時間を基準として「配賦率」を計算した場合、管理番号ごとの製造間接費は、管理番号ごとの直接工の直接作業時間×時間当りの配賦率(レート)で計算されます。                                                               なお、予定配賦率を使用して製造間接費の計算を行う場合、実際の配賦率との差額が発生しますので、完成工数と仕掛工数の比率などにより、製造間接費を完成原価と仕掛高に分ける必要があります。

原価表の作成

管理番号ごとの製造原価を費目ごとに集計し、製造原価の合計を計算します。製造か完了し、顧客への引き渡しが完了している管理番号の製造原価は「完成原価」となり、製作途中の管理番号の製造原価は「仕掛高」となります。