部門別会計の導入による工場の原価管理強化
会計ソフトには、部門別会計の機能を有するものがあり、会社全体でのコスト集計に加えて、部門ごとのコスト集計を行うことができます。
部門別会計は、事業部別・支店別・営業所別など、組織別の収益を明確にするために使用されることが多いですが、工場においても、製造部や資材部などの部門ごとに部門別会計を行うことにより、工場全体の原価管理の強化や、製造間接費の製品別配賦の精度を向上させることができます。
工場への部門別会計導入の効果
製造経費の原価管理強化
工場全体の原価管理を行うためには、材料や部品のロスの削減、作業工数の削減、製造経費の削減などが挙げられます。 このうち、製造経費の削減については、最初に、どの部署で発生しているのか、どのような経費が発生しているのかを把握する必要があります。 次に、製造経費の管理担当者を決め、予算等で定めた目標の範囲内に製造経費の発生を抑えることが必要となります。
そのためには、製造部や生産管理部などの部門ごとに、製造経費の発生額を集計することが必要となりますが、部門別会計を行うことにより、製造経費の部門別集計が容易になります。
賃率計算の効率化・精度向上
個別原価計算や組別総合原価計算を実施する場合、直接労務費の賃率や製造間接費の配賦レートを設定する必要がありますが、直接労務費の賃率を計算する場合、労務費のうち、直接工に係わる金額のみを集計する必要があります。 部門別集計を行っていない場合、月次試算表や決算書(製造原価報告書)に記載された労務費には、直接工と間接工の労務費が混在しているため、直接工の労務費を集計するために、給与明細等を確認するなどの集計の手間が掛かり、また、計算ミスが起こる可能性も高くなります。 部門別会計を行うことにより、試算表で労務費を直接部門・間接部門に分けることができ、賃率の計算作業の効率化や精度向上が図られます。 また、各部門の労務費の発生状況を容易に把握することができ、業務改善による効率化を検討するきっかけにもなります。
製造間接費の配賦レートの精度向上
工場の規模が大きくなるにつれて、間接部門が多くなりますが、間接部門の行う業務内容は、下の図のように、工場全体に対して行う業務や、特定の部門のために行う業務に分かれています。
| 部門 | 業務内容 | 業務の提供を受ける部門 |
| 業務部門 | 労務管理、安全管理、設備管理など | 工場内のすべての部門 |
| 品質管理部門 | ISO等の工場全体の品質管理体制の維持など | 工場内のすべての部門 |
| 生産管理部門 | 営業部門との調整、生産計画の策定、製造指示、出荷指示など | 製造部門 |
| 資材部門 | 材料の調達、在庫管理など | 製造部門 |
間接部門の労務費・製造経費は、最終的には製造部門へ集約され、作業時間や生産数量などの基準により、各製品に配賦されます。 また、製造部門を製品種類ごとに分けている場合がありますが、製造部門ごとの従業員数や生産数量が異なる場合、各間接部門から提供を受ける業務量が異なるため、間接部門ごとの製造間接費を、製造部門ごとに提供する業務量に応じて負担させる必要があります。 部門別会計を行っていない場合、工場内の各部門で発生しているの労務費・製造経費を部門別に把握することが難しいため、製造間接費レートの設定が粗くなってしまいます。 部門別会計を行うことにより、工場の各部門の労務費・製造経費の発生額が明確となり、業務提供量に応じた間接部門費の配賦が可能となり、製造間接費の配賦レートの精度向上が図られます。
労務費・製造経費の予算編成と部門別会計による予算管理
工場の労務費・製造経費の原価管理を行うためには、労務費・製造経費の予算編成を行い、月次決算で実績値を把握し、予算比較を行い、予算の範囲内に納める必要があります。 予算編成を工場内の各部門で行い、部門別会計により予算管理を行うことにより、工場全体で予算管理を行うよりもきめ細かいコスト管理を行うことができます。
また、工場内の各部門で予算管理を行う場合、各部門の責任者に予算執行の権限を委譲するため、将来の経営幹部の育成にもつながります。
