個別原価計算や組別総合原価計算において、製造作業に従事した作業員の労務費を明確にする場合、「賃率」を設定し、製品ごとの製造作業に伴い発生した「直接作業工数」に賃率を掛けて直接労務費を計算する必要があります。                                  「賃率」の計算や「直接作業工数」の記録・集計を行うためには、工場の従業員を「直接工」と「間接工」に区別する必要があります。

直接工に該当する工場従業員

製品の加工・組立・仕上げ作業など、製品の製造作業に直接従事する工場従業員が該当します。                                また、製品の検査工程に従事する工場従業員についても、製品ごとの作業時間が明確にできるのであれば、直接工に含めることにより、製品ごとの製造作業時間をより正確に計算することができます。

間接工に該当する工場従業員

生産管理業務・資材管理業務・設備修繕業務など、製品の製造作業に間接的に係わる工場従業員が該当します。                                                            また、工場長や、製造部に所属していても管理監督業務のみに携わり、製造作業に直接携わらない従業員も、間接工に該当します。

工場の各部門と直接工・間接工の区分

工場内に次の図のような各部門を設けている場合、直接工に該当する従業員は、監督者を除いた製造部の従業員と、製品検査に従事する品質管理部の従業員となります。

賃率の計算方法

直接労務費の賃率は、「直接工の労務費合計」を「直接工の直接作業時間合計」で割ることにより計算されます。                                           賃率は、1時間当りまたは1分当りの単価で計算されることが多く、「レート」と呼ぶこともあります。

直接工の労務費合計

工場従業員の労務費のうち、直接工に支払う給与・賞与や、社会保険料の会社負担分のうち、直接工に対する部分の金額などが直接工の労務費に該当します。                                                               一方、間接工に支払う給与・給与・賞与や、社会保険料の会社負担分のうち、間接工に対する部分の金額などについては、間接労務費となるため、賃率には含めずに、製造間接費として各製品に配賦します。

直接工の直接作業時間合計

直接工の作業時間のうち、加工・組立・仕上・検査など、製品の製造作業に直接従事した作業時間が該当します。                                                                      朝礼、打ち合わせ、清掃作業などは間接作業時間に該当するため、直接作業時間には含めません。                                    また、直接工の直接作業時間合計を、直接工の総出勤時間の合計で割ると、稼働率を計算することができます。

直接作業時間の集計方法

直接作業時間を集計するためには、直接工に該当する従業員ごとに「作業日報」を作成し、日々の作業時間が直接作業または間接作業のいずれに該当したのかを記録する必要があります。

直接作業・間接作業の両方に従事する工場従業員の取扱い

製品の製造作業と間接作業の両方を行う工場従業員については、労務費や作業時間を直接作業分と間接作業分に分けることにより、直接労務費の賃率の計算がより正確になります。                                                     直接労務費:直接・間接の両方の作業に従事する従業員の労務費の総額÷年間の総出勤時間×直接作業に従事した時間数                                         直接作業時間:直接・間接の両方の作業に従事する従業員の総出勤時間のうち、製造作業に直接従事した作業時間